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第七章
それから半年の月日が流れた。
太郎はフラフラと街を歩いている。
何もやる気がしない。めんどくさい。だるい…。
あれから太郎は谷口の事を忘れた日はない。
ほとんどの日は酒に溺れた。
クスリに逃げた日も…。
いつの日にか太郎は上を向くことを忘れていた。
人込みの中を歩いている。すると何故だか懐かしい気がした。そして数カ月ぶりに顔を上げた。
「た、谷口!?」
太郎の目の前には紛れも無く谷口がいた。
そしてびっくりしながら谷口と思われる人物は口を開いた。
「俺は谷口だけど、何で亀が喋ってんだよ!?ってかなんで俺の名前知ってんの?」
太郎はテンションが上がり、谷口に抱き着いた。
「谷口~~~~!生きてたのか!殺そうとしてマジスマン!生きてたならよかった!許してくれ!あれから後悔の日々だったんだ!」
「なるほど…。テメエが兄貴を殺したやつか…。」
「何っ!?た、谷口太郎じゃあないのか?」
太郎はテンパりだした。
状況がよくわからない。
「俺は谷口だが太郎じゃあない。双子の弟、次郎だ!半年前から兄貴は行方不明だったがまさかこんな珍亀に殺されているとは…!兄貴、仇はうつぜ!!」
次郎は怒りで震えている。太郎は直感でヤバイと感じた。スッと後ろを振り返り、全速力で逃げ出した。
そんな事ってあるのか!?マジかよ!?どんな確率だよ!ふざけんなよ!ありえへん!ありえへん!ありえへ~~ん!
太郎はパニックになりながらダッシュしたが所詮は亀…。すぐに次郎に捕まった!
「あのなぁ、兄貴は優しかったが俺は優しくないぜ。逃げやがって反省もしてないようだなこのボケ亀がー!!」
太郎は手足、頭を甲羅の中にひっこめて完全ガード体制に入っている。
「ほう…甲羅の中にいれば安心ってか…!この期に及んでまだ自分の命が惜しいかボケ亀!死ねや!」
次郎はそう言うとひょいっと太郎を放り投げた。
ポチャン!
「ギャアアアァァァーーー!!!!!!!」
太郎の断末魔が街中にこだまする。
なんと出店のラーメン屋台のグツグツ煮えたぎった熱湯の中に放り投げたのだった。
次郎は空を見上げ、呟いた。
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