第二章

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満天の星空。静かな浜辺。波の音しか聞こえない。 その波打ち際に一匹、亀が佇んでいる。 「海を眺めていると、気分がえぇのぅ…太郎よ」そういってにっこりと微笑んでいた父の顔がまるで今そこにいるように浮かんでは消える…。 「父さん、母さん、どこにいるんだろう…。逢いたいなぁ。俺は孤独だ。故に無だ。存在が無だ。しかし何の為に生まれて何をして喜ぶというのか!わからないまま終わるのか!そんなのは嫌だ!」と、黄昏れながらブツブツ言っていると突然闇を切り裂くかのように後ろから爆音が響いた。 バリバリバリバリ!!ブォォン!ブォォォォン!!!パラリラパラリラ~! ヤバイ!暴走族だ…。 太郎は身の危険を感じ、サッと岩の陰に隠れた。 今日は地元最大の暴走族、超極悪連合の月一定例集会だ。若い人間が三十人でバイクや車に乗ってどんどん浜辺に集まって来た。服装はB系、ヤンキー系、ギャル男系とバラバラだが極悪という共通のキーワードで集まった生粋のワル達である。 「集合~ぅ!」と総長の牛丸が叫ぶと、さっきまでざわざわしていた浜辺が一気に静けさを取り戻した。牛丸は通称「鬼殺し三百年」と呼ばれ、知らない者はモグリというほどの地元ではちょっとした有名人だ。族のメンバーの顔がひきつっている。それぞれかなりのワルなのだが、牛丸には逆らえなかった。機嫌が悪いとすぐにキレて、手が出る。そしてやられた人の顔が血で赤く染まり、まるで鬼を殺したように見えることから鬼殺し三百年と呼ばれる事になったそうだ。三百年は三百人殺したという伝説が人から人へと伝わる内に「鬼殺し三百人」が「鬼殺し三百年」に変わったそうだが真相は明らかではない。 太郎はガタガタと岩陰で震えている。鬼殺し三百年こと牛丸は亀が大嫌いなのだ。かつて仲間だった亀達が次々と牛丸に殺されるのを見て来た。絶対見つかってはいけない! 集会お決まりの総長演説が始まった。 「てめぇら、気合い入ってんのかー!?」 「押ー忍!!」メンバーの息はピッタリだ。 「今日はみんなよくやってくれた!俺らの憎き国家権力ざまあみろだ!パトカー二十八台ブッ壊して警官十六人殺しはどちらも新記録だ。」 えーー!?鬼殺し三百年何言ってんだよ!何でつかまんねーんだよ!怖いよ!太郎は岩陰で震え上がっている。
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