目覚め

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記憶の海を漂う。 聞こえてくるのは、波の音だけ。 周りは漆黒の闇に覆われ、有るのは自分が自分であるという確信だけ。 身体も海の一部のような…。 もしかしたらこの世界が僕なのかもしれない。 そんな感覚に陥るような曖昧なライン。 何時からだろう? そして、何時までココに…。 もう何年もこうしているような気がする。 でも、嫌な気持ちじゃない。 これは… 諦め?かな。 ココに自分が有る事は仕方がない事。 ココから、逃げる事は出来ない。 これも仕方のない事。 それが僕の罪。 逃げる事でココまで来てしまった。 だから仕方がない…。 何から逃げて来たんだっけ? 考えただけで頭が痛い…。 それは多分昔の事。 思い出せない位に昔で、思い出したくないほど悲しい記憶。 そう。 思い出す必要のない事。 自分には要らない。僕は今も、そしてこれからもこの世界に有り続けるのだから。 だから僕は、このままで…。 しかし、その世界も彼の意思を無視して壊れ始める。 彼の、彼だけの小さな世界は突然頭をよぎった何時かの記憶によって壊された。   ・・・ ゆっくり、瞼が開かれていく。彼は小さなな部屋のベッドで目覚めた。その部屋は殆どを白く染め、静まりかえっていた。 部屋全体が白で統一され少し寂しさを感じさせる部屋だった。 彼が寝ているベットの横には小さな棚が置いてあり、 そこには小さな花が活けてあった。 白一色のその部屋で唯一の色。 それが、この花の存在を際立たせていた。
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