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「何だ。話してなかったか……彼はね、死者の心残りを満たしあの世へ送るという重要な役割を持ってるのさ」
「…死者の…?」
銀月は、椅子に座って本を読んでいり魎月を見た。
あの青年にそんな役割があったなんて…と不思議に思った。
「私たちが迎える死者の中に、心残りを持ってる人が居たら…彼に会わせてやるのも私たちの役目だよ」
「心残りがあるとどうなるんですか?」
「…あの世へ行けないさ」
いつの間にか、会話に参加していた魎月が言った。
魎月は、読んでいた本を閉じ、二人に歩み寄った。
煙草を取りだし、火を着けて煙草を吸う…。
ふわりと煙草の香りが書庫に漂った…。
「死して尚、強い心残りがあると…やがて、その対象に縛られる…自縛霊というヤツになる訳だ」
「…自縛霊…現世で何人か見たな…」
「死を受け入れずにいれば現世から離れられないからな…雨月書庫に来れない…だから、死を受け入れさせる死神の役目は大事だ…覚えていろ」
そう言った魎月は、一瞬、表情を曇らせた様に見えたが、すぐに表情を戻した。
それが、魎月と銀月の出会いだった。
その日は、あまり会話らしい会話もせずに銀月と柊は、雨月書庫を後にした。
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