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残虐な女王
そう呼ばれる君。
「首をおはね。」
冷たい眼でそう告げてさっさと部屋を後にする。
告げられ者はおいおいと泣き崩れる。
小さくため息を漏らし、立ち上がった私に、相棒の3月ウサギが「どうしたの?」と尋ねる。
「ちょっとね。」
と笑うと、私は裁判所を後にする。
向かう先は我が家。
正確には我が家の裏庭。
帰り着けば声を押し殺した様な泣き声が聞こえた。
「…泣くくらいならお辞めになっては?」
「うるさい。」
そこにいたのは女王。
実は城の薔薇園と家の裏庭は繋がっている。
顔を上げずとも私だと判断してくれる。
まぁ、毎回の事だから嫌でもわかるのだろう。
私は彼女の隣に腰を下ろした。
今の彼女には残虐さなんて少しもない。
ただ、泣きじゃくる幼子の様…。
綺麗な金色の髪を撫でれば少しだけ落ち着いた様だった。
名前を呼ぼうとして、口を開いたが、出てこなかった。
昔…彼女が女王になる前は、毎日呼んでいた名前なのに…。
本当は、残虐なんて言葉が全く似合わない優しい少女だった。
いつも笑っていて、もう忘れてしまった私の名を呼んで…。
でもある日、城から使いが来て、女王になる様に言われて…彼女は笑わなくなった。
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