女王と帽子屋

2/3
前へ
/7ページ
次へ
残虐な女王 そう呼ばれる君。 「首をおはね。」 冷たい眼でそう告げてさっさと部屋を後にする。 告げられ者はおいおいと泣き崩れる。 小さくため息を漏らし、立ち上がった私に、相棒の3月ウサギが「どうしたの?」と尋ねる。 「ちょっとね。」 と笑うと、私は裁判所を後にする。 向かう先は我が家。 正確には我が家の裏庭。 帰り着けば声を押し殺した様な泣き声が聞こえた。 「…泣くくらいならお辞めになっては?」 「うるさい。」 そこにいたのは女王。 実は城の薔薇園と家の裏庭は繋がっている。 顔を上げずとも私だと判断してくれる。 まぁ、毎回の事だから嫌でもわかるのだろう。 私は彼女の隣に腰を下ろした。 今の彼女には残虐さなんて少しもない。 ただ、泣きじゃくる幼子の様…。 綺麗な金色の髪を撫でれば少しだけ落ち着いた様だった。 名前を呼ぼうとして、口を開いたが、出てこなかった。 昔…彼女が女王になる前は、毎日呼んでいた名前なのに…。 本当は、残虐なんて言葉が全く似合わない優しい少女だった。 いつも笑っていて、もう忘れてしまった私の名を呼んで…。 でもある日、城から使いが来て、女王になる様に言われて…彼女は笑わなくなった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加