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何故消しゴムなのか?
考える御剣だったが、その疑問はすぐに解かれた。
「なんでもよかったんだな」
つまりコートの男が投げる物は、投げれればどんな物でもいいという事。
それがわかったのは、コートの男が今シャーペンを握っているから。
そして今まさにシャーペンを投げた。
消しゴムの時と同様、異常な速度でまっすぐすっ飛んでいく。
(かわせるか?)
御剣はそんな事を考えたが、すぐに考えは砕かれた。
『かわす』と思った時には、シャーペンはすでに左肩に刺さっていた。
「!?」
ツー……と左肩から、指先まで赤黒い液体が、腕をつたって流れ出す。
まさしくそれは『血』。
今まで運動オンチであるが為に、鬼ごっこは勿論、教室で暴れ回る事などするわけがない。
そういう事をしないという事は、怪我をしない。
ようは御剣は怪我をしたことがない。
つまり自分の血液を見たこともない。
そして今自分の左肩から血が流れている、『自分が怪我をしている』その事実に、御剣は砕けた。
立ち上がれそうにもない。
歩く事などもってのほかだった。
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