第一章『始動、黒き森の住人』

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何故消しゴムなのか? 考える御剣だったが、その疑問はすぐに解かれた。 「なんでもよかったんだな」 つまりコートの男が投げる物は、投げれればどんな物でもいいという事。 それがわかったのは、コートの男が今シャーペンを握っているから。 そして今まさにシャーペンを投げた。 消しゴムの時と同様、異常な速度でまっすぐすっ飛んでいく。 (かわせるか?) 御剣はそんな事を考えたが、すぐに考えは砕かれた。 『かわす』と思った時には、シャーペンはすでに左肩に刺さっていた。 「!?」 ツー……と左肩から、指先まで赤黒い液体が、腕をつたって流れ出す。 まさしくそれは『血』。 今まで運動オンチであるが為に、鬼ごっこは勿論、教室で暴れ回る事などするわけがない。 そういう事をしないという事は、怪我をしない。 ようは御剣は怪我をしたことがない。 つまり自分の血液を見たこともない。 そして今自分の左肩から血が流れている、『自分が怪我をしている』その事実に、御剣は砕けた。 立ち上がれそうにもない。 歩く事などもってのほかだった。
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