白い寝所は血で濡れる

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今から3ヶ月程前、ある事件が起きた。 ありふれた失踪事件。 世間では、ストーキングの末に女性を殺害してその住居であるアパートの一室を占拠。 そこを根城として更に10名以上を殺害して遺体の収集を行っていたシリアルキラーの話題で持ち切りで、その事件は地方紙にさえ載る事は無かった。 仮に、その件が無かったとしても、話題性の見当たらない失踪など、メディアに取り上げられたりはしなかっただろうが……。 失踪した女性は一週間後に自宅近くの山中にて保護された。 …という事になっている。 実際は、失踪ではなく誘拐であったのだが、その事実は伏せられて歪められた。 被害者女性……もとい被験者Eは、表向き精神異常患者として、「神野総合病院」の新館地下2階にて監視および隔離されている。 研究という名の悪意が敷き詰められた白い空間で、彼は2度目の覚醒をした。 被験者Eとして。 彼の名は「白戸雄一」 しかし、この先に紡がれる物語において、その名は何の意味も持たない。
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