白い寝所は血で濡れる

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  「ブーブーブー……」 用途不明の機材が置かれた部屋に警報の様な音が響き渡る。 白髪の混じった髪を掻きむしりながら、牧原は吸いかけのタバコを灰皿へと押し付けた。 「まだあれから4時間しか経っていないというのに、予想より覚醒が早いんじゃないかね?全く興味深い被験体だよ」 誰に告げるでも無くそう呟くと、白衣を翻し部屋を後にする。 時刻は深夜0時30分。 この時、彼は一人だった。 廊下の照明は感応式になっており、牧原の進む先を照らす。 比較的新しい建物であるにも関わらず天井の至る所に蜘蛛の巣が張っていて、床や壁には血の染みが転々としている。 この場所が病院である事を忘れさせる衛生とは無縁の光景。 その惨状は、長い間この階に清掃の人間が訪れていない事と、今までに起きたであろう様々な狂気を物語っていた。
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