248人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
砂漠?何故そんな所に?そう男は思ったが、考えても答えは出なさそうなので、とりあえず女を待つ事にした。
暫くすると、女が矩形で両端に取っ手のある盆を持って入って来た。
「はいっ、持って来たわよ。ご馳走には程遠いけどね」
女は笑いながら男に差し出した。盆には、パンとスープそして水だけが置いてあった。確かにご馳走には程遠かったが、男には何よりその好意が嬉しかった。
「有り難う、遠慮なく頂くよ」
そう言って男は十五分程で全てを平らげた。
「ご馳走さま、美味しかったよ」
男は言った。そして、クスッと笑ってから女は言った。
「キレイに食べたわね、そんなにお腹空いてたの?」
「いや、そうでは無いんだが残すのは人の好意を踏み躙ると思ってるのでね。」
男は、思った通りに言った。
「このご時世に珍しいわね、皆生きるか死ぬかの様な生活をしてるのに…ひょっとしたら今のご飯に毒が盛られてる時も有るのよ?」
と女は、伏し目がちに言った。少し間を置いてから男は言った。
「そういえば、君の名前は?」
「あらっ、私ったら名前も名乗らずごめんなさいね?私は凛よ。今年で19才なの。あなたの名前は?」
そう聞かれて男は考え込んだ、確かに人に名前を聞けば自分も聞かれる。しかし男は、場の空気を変えたいが為に聞いただけなので、少し困っていた。
最初のコメントを投稿しよう!