ミタリア王国とドS執事

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「良いですか?まずはこの国の言葉を覚えて頂きます。今から私は一切ニホン語は使いません。頑張って下さい」 突然言い出したヨハンに、陽良子は慌てて訊ねた。 「えぇ!?英語ならまだしもこの国の言葉なんて無理!」 「£◎☆※ÅεЁ?」 沈黙。 サッパリ分からん! 陽良子は暫く考えた。 もしや…英語知らんとか? 陽良子は笑顔でヨハンに言ってみた。 「You should fall…アー…into the hell!!」 パシィィン!! 「…つ…通じた…痛い…」 鞭で弾かれた足がジンジンと熱くて痛い。 ホントに貴方…地獄に堕ちるべきだと思う…。 そこからが陽良子に取って本当の地獄だった。 家族の事も、学校の事も、一切訊けないのだ。 しかもトイレやら食事やらの都合が全く分からない。 ヨハンはとても厳しい。 マナーが悪いと食事はちょっとだけで下げられてしまう。 お腹が空くのに何も食べられないのは苦痛だ。 お風呂に無理矢理突っ込まれ、着替えの際に身体を隠す事も許されず、とても恥ずかしい思いをした。 悔しい…悔しい…こんな変態鬼畜執事に負けたくない…。 全てを忘れてひたすら陽良子はヨハンに立ち向かった。 それしか方法がなかったからだ。 分からない、聞き取れない、お腹が空いた…チクショウめ! 何時かお腹いっぱい食べてやるんだから! 寝る時も、ヨハンは隣のベッドで陽良子を監視していた。 泣くに泣けず、睨み続けて何時か眠る。 段々分かり始めたら、徐々に食べる量も増えて、行動がスムーズに行く様になったのだ。 もうダメだ…お腹いっぱい! そう思った頃には、雪が止み春が訪れていた。 「…クリスマス…お正月…既に飛び越えちゃったよ…アハハハ…」 「無駄な時間を無駄に過ごすよりは良いかと思いますが?」 「ヨハンなんか地獄に堕ちろよ」 パシィィン! 鞭は陽良子に当たらない。 言葉同様にヨハンの行動パターンが読める様になっていたのだ。 「アタシって凄いね!」 「貴女が地獄に堕ちるべきですよ…この鶏頭」 「あれ?前から鶏頭って呼ぶけど、じゃあアタシ初めから鶏じゃーん!」 「……」 ヨハンはニッコリ笑って陽良子の頬っぺたをつねった。 相変わらず目は笑っていない。
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