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「ゴヘイモチ、ヨモギダンゴ、ササモチ、ワラビモチ!トウガンスープもあるよ~」
一人では寂しいので、陽良子は屋敷の皆を呼んだ。
珍しい食事に使い達ははしゃいでいる。
「良くもこんなに沢山作りましたね」
ヨハンはどうでも良いのか、料理に手を出さない。
腹が立ったので陽良子はヨハンの口に五平餅の味噌を付けた指を突っ込んだ。
「……」
無言。
「美味しい?ヨハンも食べれば良いのに」
首をかしげる陽良子の手を掴み、ヨハンはニヤリと笑った。
「…あっ…」
人差し指に伝わる生温かい舌の感触。
舐め回すヨハンの舌に思いっきり手を引っ張った。
だが、掴まれた以上力に勝てず、ヨハンは人差し指に留まらず、手先を舐めた。
「ヒィィィ!」
固まった陽良子に対して楽しそうに舐めるヨハンは、何故か色っぽい。
突然手を離して「不味い」と呟く。
「ですが、陽良子様が敏感でいらっしゃる事は分かりました」
ムッカー!
何なのコイツ!
じゃあ舐めるなよ!
怒っていても仕方がないので、片付けをしているフランクに料理を持って行く事にした。
右手の感覚は、まだ舌の感触に支配されている。
廊下を走っていても、右手がまだ可笑しい。
「ヨハンの奴め…覚えてろ!」
ブツブツ呟きながら、陽良子は厨房を目指す。
ふと、窓の外に目を向けたら、曇った風景に異色の存在を発見した。
流れるブロンドの髪と華奢な身体をした後ろ姿だ。
立ち止まってつい見入ってしまう。
見た事ないなぁ。
誰だろ…。
陽良子は手にした皿に目をやって、暫く考えてからテラスに出た。
「あのー…」
声を掛けると、その姿が振り返って、陽良子は腰を抜かす。
「…天使様じゃ…」
「天使様?って云うか、君は…陽良子?」
長い睫毛(天使様!)綺麗な緑色の瞳(神の使い!)スラリとした身体(男の子けぇ!?)長い手先…。
「…ん?何でアタシの事知ってんだ?」
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