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疑問に思い、頭の周りに『?』が飛び交う。
今…日本語だったよね?
少年の流暢な日本語に不自然さを感じず、たった今気付いた。
あまりにも自然だったからだ。
「わぁ!それニホンの料理?僕にも頂戴!」
大きな瞳をキラキラさせて、陽良子の皿を見つめている。
「久しぶりに日本語話せたから…お礼ね!全部あげる」
フランクにはアタシのあげればいっか!
テラスに腰を下ろした二人。
少年はニコニコと笑いながら手を併せると「いただきます」と陽良子に向かって頭を下げた。
「一度食べてみたかったんだよね~」
ヨモギ団子を一口ほうばってウットリしている。
美味しい美味しい!と、何度も繰り返している彼を見ていたらとても嬉しくなった。
「君は天才だね!特に五平餅なんかサイコーに美味しいよ!」
「ありがとう!喜んで貰えると作った甲斐があったってモンよ~」
二人は楽しく笑い合った。
少年の口に餡子が付いていたので、陽良子はハンカチを渡す。
すると少年は、ボンヤリ陽良子を眺めていた。
「…ん?何?」
「…いや…陽良子…何故僕に会いに来てくれないの?」
…は?
んっと…会いに来てくれないってどないな事よ?
「…もしかして…僕の事…聞いてない?」
「うん。聞いてないよ」
「ウッソー!半年も何してたんだ…ヨハンの奴…」
ヨハン?
陽良子は考えてみた。
少年の流暢な日本語。
日本好き。
『会いに来てくれないの?』と云う発言とヨハン。
「もしかして…王子…様?」
呟くと、少年はキラキラした笑顔を向けて頷く。
「陽良子、はじめまして!僕はシャムレック。よろしくね!」
「…名前…シャムレックって云うんだ…」
「…まさか…名前も知らなかったの?ヨハンの奴…」
呆れているのか、シャムレックは溜め息を吐いた。
これって…言い訳するべきなのかなぁ…。
「あのね、アタシ…ミタリア語を全然話せなくて…ヨハンはそんなんじゃ殿下に会わせられないって言って…アタシ毎日ミタリア語のお勉強してたの。凄く時間掛かっちゃって…ごめんね?きっとアタシのせいだ…」
ションボリ落ち込む陽良子に、シャムレックは笑った。
「随分頑張ったんだね。半年でマスターしたなら君はヨハンが思ってるより頭が良いよ?」
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