ミタリア王国とドS執事

11/20

8555人が本棚に入れています
本棚に追加
/598ページ
「ターン、ステップ…」 「ぎゃー!コケる~!」 ズッテーン! 慣れないヒールの靴は陽良子を苦しめた。 裸足なら出来るのになぁ…グスン。 パシィィン! ヨハンの鞭が床を叩く。 「出来の悪い方の教育は誠に骨を折りますね」 「…申し訳…ございません」 暫く動いていなかった陽良子にとって、ダンスの稽古は大変だった。 せめてスニーカーにしようよ…とは言えず、陽良子は激しいヨハンの脅しに耐えながら踊り続ける。 「ステップ、ターン…」 「♪パンを~踏んだ~娘~パンを~踏んだ~娘~…地獄にー堕ーちーたーン!」 「…貴女の事ですか?」 「おぉ!これはリズムが合ってて踊り易い!」 最近、ヨハンは笑わなくなっていた。 呆れてるんだろうなぁー…。 ま、別に良いけど。 …待てよ? ここ数日笑ってないのは心に余裕が無いからじゃない? 何となく鞭の音が弱い気がするし…。 陽良子はヨハンを見上げてじっくり観察してみた。 「何か?」 「ヨハン、調子悪いんじゃない?」 沈黙。 言い返さない…やっぱり! 陽良子はヨハンの腕を掴んでベッドまで引き摺った。 「ご心配なさらずとも私は大丈夫…」 「大丈夫じゃない!アタシのお祖父ちゃん、調子悪いの隠してて…我慢して…死んじゃったの!体調悪いなら寝てろって!」 「…老人と同じにしないでください」 「アンタ、幾つか知らないけど…アタシより老人だし…」 ベッドに押し倒す。 陽良子、ヨハンに猛烈なタックルをかまし、ジャンプして肘鉄。 「この…暴力女め…」 「文句なら後から聞くし、とにかく寝てなさい!あー…大根おろしに蜂蜜なんか無いよねぇ…」 お医者さんを探す為に、陽良子は部屋を出て行った。 「全く…」 確かに調子が悪かった。 喉が痛いと思っていたら、風邪を引いてしまった様だ。 見破られるとは思いもしなかったし、陽良子が自分を良く観ているのが分かる。 腹が立つ。 あんな鶏頭に…気付かれるなんて…。
/598ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8555人が本棚に入れています
本棚に追加