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「ターン、ステップ…」
「ぎゃー!コケる~!」
ズッテーン!
慣れないヒールの靴は陽良子を苦しめた。
裸足なら出来るのになぁ…グスン。
パシィィン!
ヨハンの鞭が床を叩く。
「出来の悪い方の教育は誠に骨を折りますね」
「…申し訳…ございません」
暫く動いていなかった陽良子にとって、ダンスの稽古は大変だった。
せめてスニーカーにしようよ…とは言えず、陽良子は激しいヨハンの脅しに耐えながら踊り続ける。
「ステップ、ターン…」
「♪パンを~踏んだ~娘~パンを~踏んだ~娘~…地獄にー堕ーちーたーン!」
「…貴女の事ですか?」
「おぉ!これはリズムが合ってて踊り易い!」
最近、ヨハンは笑わなくなっていた。
呆れてるんだろうなぁー…。
ま、別に良いけど。
…待てよ?
ここ数日笑ってないのは心に余裕が無いからじゃない?
何となく鞭の音が弱い気がするし…。
陽良子はヨハンを見上げてじっくり観察してみた。
「何か?」
「ヨハン、調子悪いんじゃない?」
沈黙。
言い返さない…やっぱり!
陽良子はヨハンの腕を掴んでベッドまで引き摺った。
「ご心配なさらずとも私は大丈夫…」
「大丈夫じゃない!アタシのお祖父ちゃん、調子悪いの隠してて…我慢して…死んじゃったの!体調悪いなら寝てろって!」
「…老人と同じにしないでください」
「アンタ、幾つか知らないけど…アタシより老人だし…」
ベッドに押し倒す。
陽良子、ヨハンに猛烈なタックルをかまし、ジャンプして肘鉄。
「この…暴力女め…」
「文句なら後から聞くし、とにかく寝てなさい!あー…大根おろしに蜂蜜なんか無いよねぇ…」
お医者さんを探す為に、陽良子は部屋を出て行った。
「全く…」
確かに調子が悪かった。
喉が痛いと思っていたら、風邪を引いてしまった様だ。
見破られるとは思いもしなかったし、陽良子が自分を良く観ているのが分かる。
腹が立つ。
あんな鶏頭に…気付かれるなんて…。
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