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雪が降る。
周りは銀世界…まるでニホンのお米を彷彿とさせる様だ。
丹精込めて庭師が育て(させられた)たピンク色の花。
シャリ…ガリ…。
上には何を乗せるべきか…。
「殿下、そろそろニホンの旅番組が始まる時間ですが?」
傍に居た青年が話し掛けた。
窓の外を眺めていた少年が言い放つ。
「ヨハン…サシミになるつもりはないか?」
「カニバリズムですか?謹んでお断り致します」
「何故?カニバリズム…愛している者なら僕は食せるよ?愛してる…ヨハン」
ゆっくり近付いて、ヨハンと云う青年の唇を捉える。
ヨハンは動かない。
少年は妖し気な瞳でヨハンの金髪に指を絡ませた。
『今日はここ、土井中村にやって来ました~!いやぁ…何だかなぁ!』
大画面のテレビに映し出された馴染みの顔に少年の唇がヨハンから離れた。
直ぐ様豪華なソファに座り、テレビを眺める。
『ここでは山の幸をふんだんに使った料理を出して頂けると云う事で、さっそく行ってみましょう!…あー…楽しみだなぁ』
「ズルいね…快のくせに…」
「殿下、彼はこの様な職業なのですから、嫉妬しても仕方がありません」
テレビの中は一面の緑。
山…山…山…。
素晴らしい緑色に素晴らしい晴天。
「ニホンは四季があって良いね」
ポツリと呟く。
この国は一年中寒い。
晴れる事も無いに等しい。
『この先にですね、郷土料理が楽しめるお家があると云う事で…行ってみましょう』
テレビは一軒の家を映す。
とても古い日本家屋だ。
『ここは郷土料理を地元の若い人達に教えている柴田さんのお宅。おばあちゃんのツルヱさんが、お宅に招いて月に一度、教えているそうです。いやー、それにしても見事な茅葺き屋根ですねぇ』
ナレーターは状況を人情的に教えてくれる。
ふと、少年の目に一人の少女が映った。
画面に名前のテロップ。
「…柴田陽良子(シバタヒヨコ)…鶏の子供をニホン人は名前に付けるんだね。ほら、カニバリズムじゃない?」
「…殿下、いい加減になさって下さい」
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