オスシ~oh~ダイスケデース

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「捕まえた!」 掬い上げた両手の中で暴れ回る小さな魚。 だが、指の隙間からスルリと逃げ出す。 「あーぁ…逃げちゃった」 ま、いっか。 キャッチ・アンド・リリース。 大きな岩の上に寝転がり、太陽の光を身体に浴びて、陽良子は流れる雲を眺めた。 16歳がこんなので良いのだろうか…。 街の女の子達は何をして遊ぶのだろう。 買い物?カラオケ? 「それじゃつまらなくてアタシには無理だなぁー…」 トンビが空を羽ばたいて、雲が流れて、お日様があって…。 陽良子はムクリと起き上がり、川に飛び込んだ。 自然の中で育った陽良子は、自然の中で遊ぶ事が好きだった。 夏休みは最高に面白い。 勉強から解放され、毎日遊ぶ事が出来る。 水の中で目を開けて、魚が泳ぐ様を眺めていた。 息が続かなくなって顔を出す。 風が吹いて、また空を見上げた。 「良い天気だなぁー…」 「平和ですねー…」 声がして、振り返る。 真っ黒なスーツを着た男性が腰まで川に浸かり、空を見上げていた。 金の髪が風に揺れている。 余りの美しさに陽良子は呟いた。 「…龍神様…」 「リュウジンサマとは何ですか?」 外人のくせに流暢な日本語。 「龍神様は水の神様…青い瞳をしてるし…」 青年はニッコリ笑う。 透き通る肌の色は儚くて美しい。 「ようやくお会い出来ました。陽良子様」 …陽良子…様? 「貴女には立派なレディになって頂きます。さぁ、私と一緒にミタリア王国へ参りましょう」 …は? 何だか良く分からないけど…。 「誘拐だぁぁぁぁ!」 陽良子は水に潜り、川の流れに乗って必死で泳いだ。 ヒィィィ!外人がアタシを誘拐ーっ! ガシッ! 足首を掴まれて、陽良子は慌ててもがく。 助けて…助けてぇ~! 青年の足を思いっきり蹴ったらしく、彼もバランスを崩して川に倒れた。 やった! が、しかし…。 「…これは…教育に時間が掛かりそうですね…」 首根っこを掴まれて、気付けばびしょ濡れになった青年の顔が直ぐ近くにあった。 笑っているが、目が冷たい。 「いやぁぁぁぁぁ!!」
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