『D・T』

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「あぁ、やべぇ。」  僕は行為を終え、カーテンと窓を全て開け、タバコを吸い始めた。この話の彼女とはその十日後に別れ、次のチャンスが与えられる事はなかった。未だに「襲うなよ。」の真意は闇の中だ。いや墓場まで僕はこの問いを持って行くだろう。そろそろ三十分が経つ。悠がウチに来る頃だ。 「ピンポン!」  家の外から悠の声が聞こえた。僕は玄関に行き、いつものように悠を二階の僕の部屋に招き入れた。 「ビデオどうだった?」  悠はソファーに掛けるなり聞いてきた。 「うーん。七十点。」 「まあまあじゃん。」 「お前のは?」 「まじ最高!」  悠は両手の親指と小指を立てる、変なポーズをしながら答えた。 「まじ?貸して!」 「えー。じゃあお前の貸してね。」  僕らは他愛のない会話をした。ていうか他愛のある会話ってどんなだろう?僕と悠の場合、小学校の時から今まで、一週間の半分は会っているから、特別な話などあるわけがない。いや最近なら一ヶ月前にあった。それは悠の筆下ろしの話だった。  あの時はさすがにびっくりした。お盆明けのまだ残暑の残る時だった。その日は始め良く分からなかったが、悠が良く腰を押さえていた。そして「あぁ、腰が痛ぇ。」と連呼していた。僕は相当激しいオナニーをしたのだろうなと思っていた。でも余りにもうるさいから聞いてみた。 「どんなプレイしたの?」 「は?なんで分かるの?」  悠は驚いた顔をした。そしてこう言った。 「正常位。」 「は?意味わかんねぇから。何一人で正常位してるの?」 「は?一人じゃねぇから。」 「は?」  僕の頭の中は真っ白になった。そして良く考えた。一人じゃない・・・一人じゃない・・・ 「え?お前セックスしたの??」 「え?お前分かんないで言ってたの?」  まじでか・・・先を越されてしまった。痛い。つうかなにが正常位だよ。どう考えても正常じゃねぇし。でもやられてしまった。僕は少なくとも悠よりは早いと思っていた。てか裏切り者。僕の中で怒りが込み上げてきた。それと同じくらい羨ましい気持ちもあったのは事実である。しかしここまで言っといて、どんなに僕が問いただしても、どんな相手だったかとか、どんなシチュエーションだったかとか、この先の詳しい話はしてくれなかった。
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