『D・T』

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 それから一ヶ月が過ぎようとしている。未だにこいつは詳しい事を語っていない。僕もウソなのではないかと何度も疑ったが、どうやらやったのは本当らしい。どう考えても悔しいが、どう考えても羨ましかった。 「あ、そう言えば今度の日曜に常雄が回すらしいよ。」 「そうなの?行く?」 「うーん、微妙・・・」  常雄は高校入学と同時にターンテーブルを買った。今では地元の百人ぐらいのキャパで、月一か二、回している。常雄の家に遊びに行った時、何度かターンテーブルを回させてもらった。あれは見ている以上に難しい。テンポが違う曲同士を同じにしないと、曲が変わった時、違和感がある。その微調整は相当練習しないと出来ないものだ。プレイをする常雄を見た時、普段にない真面目な顔で、素直にかっこいいと思ってしまった。 「まあ、暇だったら行くか。」  学校でも何度か誘われた。でも僕はあまり乗り気ではなかった。正直な話、R&Bな曲はあまり聴く方じゃなかった。むしろロックが好きだった。しかし十九日の日曜日が近づいても、一向に予定など入るわけもなかった。それは悠も一緒で、金曜日には二人で行く事が決まっていた。
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