『D・T』

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 そして日曜日の夕方、僕らはクラブに向かった。その日のイベントは常雄を含めた四人のDJが回す事になっていて、フリードリンクの三千円だった。階段を降り、クラブの中に入るとそこは薄暗かった。良く分からないがかなりの人が居るみたいだ。聴こえるのは爆音のミュージックだった。この重低音は心臓に良く響く。もう一人目のプレイが始まっているらしい。僕と悠はカウンターに近づき、グラスをそれぞれもらった。僕と悠はひとまずテーブルに腰を掛け、周りを見渡した。〇ゲージのピアスや刺青をした奴など、色んな奴が居た。女もけっこう居る。突然、僕は肩を叩かれた。僕が振り向くとそこには常雄が居た。 「・・・れたね!」 「あん?」  この音で良く常雄の声が聞き取れない。常雄は僕の耳元に口をやり大声で叫んだ。 「良く来てくれたね!」 「おお!」 「俺は三番・・だから、楽し・でってな!」  大体しか聞き取れないが、僕は頷いた。そして常雄は僕と悠に握手をして、どこかに行ってしまった。それからけっこうな時間が過ぎた。酔いも軽く回ってきていた。そして常雄の番がきた。悠が僕の耳元で叫んだ。 「ちょっと行ってくるな!」  悠はダンスフロアに繰り出した。僕は遠巻きにそれを見ながら、酒を飲み続けた。常雄のプレイは何度か聴いた事があるが、やはり部屋で聴くのと、クラブで聴くのとは全然違っている。常雄が発信するリズムにオーディエンスが反応していた。突然、さっきまで悠が居た椅子に女が座ってきた。二十歳ぐらいだろうか、僕よりは年上に見えた。 「どっか行かない?」  その女は僕に叫んできた。 「は?」  僕は聞き返す。 「右の太股に龍が居るんだけど、見たくない?」  女は僕の耳元でそう囁き、太股を指差した。かなり見たい!僕は迷ったが、酔いと爆音で思考が働かない。僕は本能のままその女に引っ張られ、店を出た。店では常雄の『イマジン』のR&Bバージョンが流れていた。
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