第六話貴方の百鬼夜行

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「外すんじゃないっ。外したらあんたを俺が食らうしかなくなるんだ。外してはいけないんだっ。」 鬼の言うことを聞いてはなりません。あの鬼が言うことを聞いてしまったら、貴方はまた陥ってしまいますよ。この世界に。 さあ、深呼吸をして心を落ち着けて。ゆっくりとでいいです。面を外してください。 「駄目だっ!外しちゃ!外せば、僕と同じになってしまう。見たでしょう?剥がれ落ちたのを。」 確かに、鬼へと変化する際に彼からは狐の面が剥がれ落ちました。 いいでしょう。これは貴方が決めることです。面を外すも外さずも貴方しだい。さあ、どうしますか? 「……。」 「さあ、外さずにこのまま先へ進もう。」 鬼が、貴方を誘います。しかし、貴方の視界は一瞬真っ暗になってしまいます。なぜなら、白い手達が次々と貴方の顔を隠すようにへばりつき始めたのです。 その手達は、貴方の後ろの手ではありません。貴方の体から無数に飛び出している手です。えぇ、鬼も貴方の今の光景にはひどく驚きを示していますよ。だんだんと小さくなり、元の少年に戻ってしまうほどに。 白い手は、貴方の顔を埋めると、ゆっくりと顔から下へと下がって行きます。 カラン 何かが地面に落ちる音と共に、貴方の視界は開けました。面が貴方の顔から外れたのです。するとどうでしょう、貴方の姿も幻覚が消えるかのようにすっと元の形へと戻っていきます。 白い手達は、面へとくっついたまま真っ暗闇の地面へと消えていきましたよ。どうやら、助かったようです。しかし、まだ声は出してはいけません。わかってますね? 「はず……れた。外れてしまったっ。くそっ、交代ができると思ったのに。なんで、なんで……。」 狐の面が外れた少年の顔は、いくら暗闇といえど近くにいるのだから見えるはずですが、暗く陰り見ることができません。しかし、どうやらひどく悔しがっているようです。 まだ、うっすらと白さのせいで見える手へ、彼は足を振り上げたかと思うと一気に振り落としました。潰れる様な音がすると思いましたか?しかし、音はせずに、腕はすっと消えて暗闇に解けてしまいました。 少年は、貴方へと近づくと、耳元で囁きました。 「次は絶対に食らってやるからな。」 低く暗い声は、私には微かに聞こえる程度。なんと言っているのかはわかりませんでした。少年は何かを貴方に言い残し背を向けます。
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