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「……にん……げん。僕はっ、人間を選ぶっ!!」
ぶっつんと、まるで全てをシャットアウトされたように、辺りは暗くなった。聞こえるのは僕の荒い息だけ。心臓がドキドキと鳴り止まない。
「僕は……人間。人間でいい。他のものになんてならなくたって。いいんだ。」
ぽつりと呟いた。自分に言い聞かせるように。
「そう。それが君の選んだ物。」
声が上から降ってきた。冷たくはない声。ゆっくりと顔を上げると、そこにはワカさんが僕を見下ろすように立っていた。
僕は身をこわばらせる。
「怖がらなくていいよ。君が選んだゴールへ連れて行ってあげる。」
僕の手は掴まれた。抵抗しようかと思ったけど、彼の表情が幾分柔らかかったのと、彼の足がうっすらと見えたことに僕は身体の力が抜けた。彼は僕を引っ張っていく。
「戻れるの?」
かすれた声で、僕はワカさんに聞いた。彼は小さく頷いて答えてくれた。それを確認したら、肩の力が抜けて涙が溢れ出てきた。
明るい光が見えたかと思うと、光の前で彼は僕の手を離す。
「……二度目はない。から。」
その言葉を耳が捉えると、僕は背中に衝撃を覚えた。暖かい光の中へ、僕は包まれていった。
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