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目を覚ますと、そこは僕の部屋。僕は自分のベットに横たわっていたのだ。
「なぁんだ。夢かぁ。」
背中がびしょびしょに濡れていて、微かに目からは涙が出ている。僕は涙を拭うと起き上がった。
それにしても怖い夢を見たな。
「おぉい、忍!遊びに行く約束だろ!!?」
翔也の声だっ!翔也の声が下から聞こえてきたのだ。翔也が生きてるってことは、やっぱりアレは僕の
夢だったんだっ。僕はほっと胸を撫で下ろした。
「今、行く~!」
さっさと濡れていたパジャマを脱いで服に着替え、準備をし表に飛び出す。そこには、いつもの笑顔で
迎えてくれる縁と、翔也。莉奈ちゃんがいた。
「おっそいぞ、忍!」
「ごめんごめん。さ、行こ、いこ!」
怒っている縁に謝りの言葉を述べて、背中を押しながら先へ行くよう促す。いつもの光景、あぁ、良か
った。そういう気持ちが僕を包み込んだ。
「で、今日は何処へ行くの?」
皆の後にいつも通り僕はついていった。しかし、何か変だ。僕の問いに答えず、三人はさっさと足を進
めて行ってしまう。
何かがおかしい。でも、三人のことだから、何か脅かそうとでもしてるに違いない。
「ねぇ、何処行くの?わぷっ!」
いきなり三人の足が止まったので、僕は前に居た翔也にぶつかってしまった。ぶつけた鼻を押さえて顔
を上げる。
「着いたさ。」
翔也が振り返りもせずそう言った。僕は、首を曲げて、着いたと言う場所を見るべく翔也の背中から顔
出す。心臓が大きく波打った。
「忍ちゃん、一人で寂しいでしょ?今日はね、あたしたち。忍ちゃんを迎えに来たの。」
莉奈ちゃんが振り返る。そして、僕の腕を握った。僕は逃げようと後ずさる。
「逃げないでよ。一人で。」
縁がもう片方の僕の腕を掴む。僕は声がでない。
「大丈夫だよ。俺達が一緒だからさ。」
翔也が、振り返って、僕の首を掴んだ。そして、僕の首を固定してソレを見せる。暗いくらい洞窟。僕
は、その先にある扉がくっきりと鮮明に見えた。その扉は開け放たれて奥に潜む暗闇が顔を覗かせてい
る。
そして、扉に彫られている少女が目を見開いて僕を見ている。それで僕は気付いた。その彫られている
少女の顔が、ワカであることに。彼女は僕にゆっくりと微笑んだ。
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