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「さあ、貴方にクイズよ。覚悟はいいわね?」
クイーンの問いに、私はコクンと頷いた。
彼女は笑みを私に向けた。私の背に、緊張が走る。
「ふふ。先程まで居たあの子はだあれ?」
ドクンと心臓が波打った。
そんなこと、私は知らない。知らないよっ。そんな問題、なんであの子がいなくなった途端にするの?
焦りが、苛立ちが、焦燥感となって私に襲い掛かる。
心臓の音が私の耳に強く早く鳴り響いた。
「……わ、わかるわけないっ。」
私は上擦った声で必死に目の前に居る彼女に訴えかけた。目は見開いていただろうし、額には皺がよっていたはずだ。
手のひらにはひどい汗が滲み出ているのがわかる。
「あら?どうして?一緒に居たじゃない。それにあの子は貴方の名前を知っていた。貴方だって知っているんじゃない?簡単な問題でしょ?ふふふ。」
クイーンの言葉に私の鼓動がもっともっと早くなった。
そういえばあれは誰?見たことはない。あんな子。でも、私は知っている。そう、知っている。けど、知らない。本当は知らない。じゃあ、あの子はいったい誰?
疑問が頭に渦巻く。けれど答えは出ない。
「……。」
「あら?わからない?じゃあ、時間もないし。答えを教えてあげるわ。た・だ・し。その答えを貴方が言わなければ正解とはしないわ。いいわね?」
クイーンが困ったようにそう言った。そこまで私を追い詰めるのが目的ではなかったのだろう、ただ単にゲームを楽しみたかっただけ。そんな印象を受けた。
私の心はなんて現金なのだろう。答えがわかると知ったら、心臓の音はだんだんと収まっていった。
「うん。」
早くここを抜け出したくて、私はクイーンの言葉に同意をしめした。それにクイーンはにっと笑う。
「ふふ、あの子の名前はね。」
その後のクイーンの台詞が私にはゆっくりと聞こえた。まるで一つ一つを区切りながら言っているように。
「カシワギ、ヨウコよ。」
クイーンは未だに笑ったまま。私は背後に悪寒を感じた。
今、何て?かしわぎ……ようこ。って言った?柏木洋子って、そう言った?
待ってよ、その名前は……。
「わ、私の名前!?」
「ふふ、あの子の名前よ。柏木洋子。さあ、言ってごらんなさい?」
なんだか、私は言ってはいけない。そんな気がした。けど、私はあの子の名前を知らない。わからない。
このままではゲームが終わらない。
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