第一話開かずの扉

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建物が並ぶ住宅街から離れ、放って置かれたように伸びた草がぼうぼうと茂る広い場所へと出る。草を掻き分けて進むと、うっそうとした伸び放題の雑草の中に見つけたのは、一つの洞窟。 僕等は、その洞窟のちょっと奥にある扉の前に立っていた。 「知ってる?この扉って、開かずの扉って呼ばれてるらしいわよ。開かずの間に似ている話を聞いたことがあるわ。」 「知ってるー!この扉の中に入ったら最後、戻って来た人はいないんだって!!わくわくだよね。」 縁が脅かすように人差し指を立てて話を切り出し、莉奈ちゃんが両手拳を握り首を揺らしながら縁に楽しそうに答えている。 僕は怖くて、皆よりちょっと離れた場所で様子を伺い、耳を傾けていた。 「忍!何やってんだよっ!入るぞ!!」 翔也がイラついたように大きな声で僕を呼ぶ。翔也の声は洞窟に内に木霊して響き、僕を何度も呼んでいるように聞こえた。思わず僕は身を縮みこませ、翔也を恐る恐る見る。 「わ、わかったよっ。」 僕が見ると、三人は早く来るよう僕に視線で合図していた。僕は怖いけど仕方なく歩を進めて、皆がいる場所へと歩み寄る。 扉の近くまで来ると、僕はますます入りたくなくなった。足が震えそうなのを必死に堪える。扉の上に小さな少女の絵が彫られているのが目に入る。目をしっかりと閉じ、手を組んでいる少女。扉にも何か彫られているようだけど、模様のようで何が描かれているのかはよくわからない。 「さぁ、準備はいいかしら?」 「もっちろん!」 「早くしろよ。」 「……。」 扉に手をかけて、縁は僕ら三人に笑顔で問いかける。莉奈ちゃんは元気よく返事をし、翔也さんは縁を急かした。僕はなんとも言えず黙っている。 縁は皆に向かって頷くと、扉をゆっくりと押した。噂では、決して開かないとされている扉。それが、ゆっくりと開かれていく。 僕は思わず一歩引いた。扉の上の少女の絵が目を開いたように見えたからだ。 「わぁ。開いた、開いた!」 莉奈ちゃんの声で扉の方に目が戻される。扉が開いた先は真っ暗な世界。どこまでも続く廊下のようなそんな感じ。ひどく恐怖に駆られた。その場から逃げ出したくてたまらない。 だって、何故だか知らないけど鳥肌が立って、背中には氷水を入れられたようにひやっとしたから。嫌な汗が僕の額を伝う。 僕は、一歩後ろへと退いてしまう。
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