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「大丈夫だよ、忍ちゃん!」
莉奈ちゃんがそんな僕に気付いて、声を掛けてくれた。笑顔で僕の手を握ってくれる。そして、笑顔の
まま僕に頷いてみせた。
莉奈ちゃんの表情に、僕の心臓が少しづつ収まっていく。
「そうよ、忍。私達がいるんだから、平気。平気!」
「そうそ。何かあったら一番年上のお兄様が守ってやるから。安心しろって。」
縁と翔也も僕が怖がりなのを知っているからだろう、を安心させるよう言葉を投げかけてくれた。
そう……だよね。皆いるんだし大丈夫だよね。
「うん。」
僕が頷くのを見ると、縁と翔也は踵を返し扉の中に入っていく。しばらく奥へいくと、手を振ってこい
こいと合図していた。莉奈ちゃんが僕の手を引っ張って、扉の中へと連れて行ってくれる。
中に足を踏み入れたこの時。僕はもう、扉の少女のことを忘れていたんだ。
「うわぁ、目が慣れてくると思ったより暗くないわね。」
「そうだな。」
「お姉ちゃん!目の前に明かりが見えるよ!!」
暗闇を話しながら歩くこと数分。青白い光が一つ、ちらりちらりと前方で揺らいでいるのを莉奈ちゃん
が見つけた。僕らも前方に出現した光を確認し、駆け足で近づいていく。
段々と形を成す青白い光。それが完全に一つの形になった時、僕らは広い部屋に出た。
「ようこそ。」
青白い光が織り成したのは、青白く光る一人の少年。僕らに、彼は深くお辞儀をした。少年の顔だけは
はっきりと見て取れるが、足元は暗闇に溶けているようで形を確認できない。
僕はぞっとして後ずさりしてしまう。
「あなた、誰?」
莉奈ちゃんが興味津々と言うように目を輝かせ、彼に近づいて行き問いかける。莉奈ちゃんはあれが怖
くないのだろうか?足がないような気さえする目の前に立つ少年。彼が莉奈ちゃんの問いに答えるべく
口を開いた瞬間、僕は駆け出していた。
逃げ出したい。何も聞きたくない。
その一身で暗闇の中、元来た道を走り出す。走って、走って。けど、光は一向に見えなくて。暗闇が僕
の心を掻き乱す。
「いたっ!」
いきなり顔に強い衝撃と痛みを覚え、あまりの痛さに手で顔を覆った。けど、痛みよりも背後に忍び寄
る先程の青白い光が視界に入り、慌ててもう片方の手をぶつかった場所へと伸ばした。冷たい硬い感触
が手のひらに伝わってくる。
扉だ。入ってきた扉が閉まっている。
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