第一話開かずの扉

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「忍ーっ!何してたんだよっ!?」 翔也が息を切らせながら追いかけてきた。僕の肩を掴み揺さ振る。伝えたいことは山ほどあるのに、口 が震えて思うように言葉が出てこない。顔から血の気が引いていくのがわかった。 そうこうしているうちに、他の二人と青白い光を放つ彼も僕の近くにやってきた。縁と莉奈ちゃんが嬉 しそうににこにこと笑っている。だけど、彼は無表情のままで相変わらず足元は見えない。 「忍ちゃん、凄いんだよー!ここ!」 莉奈ちゃんが両手をぶんぶんと振りながら嬉しそうに言った。目が輝いているし、とても興奮している みたいだ。頬が仄かに赤らんでいる。 何が?そう問いただしたいけど、口元は震えるだけで言葉にならなかった。 「そうそう、普通のお化け屋敷なんかより、ずっと楽しそうよ!」 縁もなんだか楽しそう。僕、お化け屋敷でさえ怖いんだけど。 青白い彼が、まだ震えも止まらず、何も話せない僕を一瞥をした。僕は一歩下がるが、扉が邪魔をする 。彼が口を静かに開いた。 「入り口は入るところ。出口ではありません。自己紹介が遅れました。私はここの案内を担当してます 、幽霊のワカ。と申します。」 「アトラクションみたいなもんらしいぜ?好きなコース選んでゴールまで行くゲームだってさ。」 翔也が笑って僕の背中と扉の間に手を差し込み、僕を押した。僕は扉から離れ、ワカさんとの距離が近 くなる。 近くで見ると、とても幼い顔つきで。僕の鼓動がゆっくりになっていくのがわかった。怖くない。笑っ てはいないけど、敵意がないのが見て取れた。 よく、見ると青白く光っているのと、足元が見えないの以外は僕らと同じような体の作り。 「はい、皆さん幽霊が怖いものだと思っているようで。そういったイメージを無くす為の活動としてゲ ームをしていただこうかと。」 あ、笑った。 ワカさんの笑った顔は可愛らしかった。幼さゆえの独特な笑顔。その敵意の見えない笑顔を見て、僕の 警戒心は失せていった。 口の震えも止まり、身体も熱を帯びてきた。落ち着いてきた。そう自分でわかるくらいに。
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