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時は十一年前、春。
俺――笹原春一は元気に外を走り回っていた。
両親から貰った名前は、二人が好きな季節が春だったから、という事で決まったらしい。
両親の期待通りと言うべきか、それとも遺伝か――俺も、一番好きな季節は春だ。
十一年前から、それは変わらない。
幼い俺は、しっかりと着付けされた服がよれよれになる程に走り回っていた。
四月二日。
後に忘れられない思い出ができる我が母校、夕波市立夕波小学校への入学式だ。
式の一時間前からテンションの上がりきった俺を、両親が呼ぶ。
俺は大きく返事を返し、やはり元気に両親の元へ駆け寄った。
「ほら、春ちゃん。いくわよ」
母に優しく手を引かれ、親父と三人で桜並木を歩く。
その日はまさに、入学式にふさわしい日だったと言える。
丁度今の時期が満開の桜が何とも綺麗で、俺はそれを見てさらに心を弾ませた。
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