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暫く歩き、少学校が見えてきた頃には、俺の興奮度合いは最高潮に達していた。
両親が止めてくれなければ、周りを見ずに走り出した末、恐らく車と運命の出会いでもしていただろう。
事実、興奮から先走った俺は、二度も信号無視をしかけたらしい。
……子供の興奮、侮るなかれ。
これから六年間通う校舎は、当時の俺には輝かしい存在だった。
五年生あたりから性格が曲がり始める為、卒業時には「もう見たくもない」と思うようになるのだが。
胸を高鳴らせた俺は校門を潜り、体育館の前まで辿り着いた。
式が始まると、それから全てが終わるまで一人きりになる。
六歳という年齢では、相当の大冒険だ。
「春くん。ドキドキしてない? 大丈夫?」
母さんがそう聞いてきた時、俺は他の親子を何気なく眺めていた。
どこの親も我が子を心配し、それに答える子供も不安そうな表情をしていた。
中には泣き出す子も居た。……少し、俺も不安になった。
しかし、最後には高揚する気持ちが勝った。
不安げな両親を見上げ、俺は笑った。
「うん!!」
受付を済ませ、大勢の親子連れに揉まれながら、俺達家族も何とか体育館に入る。
中に入ると、きっちりとスーツに身を包んだ教師が俺に笑い掛けた。
若い、女の先生だった。
……何故、中高と上がる事に比例して教師の年齢も上がっていくのかは謎だ。
「それじゃあ、一年生の皆はこっちにきてね」
声に反応した子供たちが、ぞろぞろと先生についていく。
俺は、両親を一度だけ振り返り、前を向いた。
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