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右隣には少女が座っていた。
大きな目。可愛らしい小さな唇。少女らしい華奢な手足。
そして黒髪の中で際立つ、流れるような茶色の髪。
明らかに他とは違う少女の雰囲気に、俺は視線が外せなくなっていた。
断言出来るが、この時点で恋心を抱いたなんて事はない。
ただ、不思議に思う事があったのだ。
背中まで伸びた綺麗な髪を穴が空くほど見詰め、幼い俺は疑問に思った。
当時の俺は、髪を染める技術を知らなかった。
そして、世の中には地毛が茶色の人がいるという事も知らなかったのだ。
(なんでこのこ、かみがちゃいろいんだろ?)
俺はお偉いさん方の挨拶を物凄く聞き流しつつ、少女を見つめて首を傾げた。
子供ながらの、純粋な好奇心からの疑問である。
素朴な疑問と少女の可憐さに、俺の目は引き付けられたままだった。
……そして、小学生にして平然と人の話を無視する俺であった。
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