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今思えば『恋』というものを夢見る子供だったのかもしれない。
でも、あの時は『運命』だと思っていた。
あの出会いも――――。
「止めて下さい!」
強引に腕をとられ、少女・初音(はつね)は拒絶する。
見るからにガラの良くない人たちだった。
帯刀しているせいか、誰も初音を助けに入ってくる者はいない。
「いいじゃねぇか」
二人組の男たちはなおも初音の腕をにぎりしめ、近寄ってくる。
(……いや―――!)
心の中で悲鳴を上げるが、助けは期待できない。
(―――誰か……)
「あれ、嫌がっているように見えますけど……僕の気のせいですか…ね」
不意に割って入る聞き慣れない男の声に、初音とその腕を掴んでいる男たちが声の主を見る。
そこに立っていたのは、優しげな顔立ちの青年だった。
(……うそ……かっこいい……)
状況も忘れ、初音はポカンと青年を見た。
「何だ……てめぇ?」
「いえ、その子が嫌がっているようなので止めて下さい……と」
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