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「ねぇ、蒼(そう)」
幼い少女は双子の姉に問い掛ける。
「なぁに、紅(こう)」
幼い少女は双子の妹に応える。
年の頃は十くらいだろうか。
二人とも少し裾の長い薄紫の巫女服を着て、黒い前髪を綺麗に切りそろえ、少し長い後ろを白い紐で結っている。
瓜二つ。見分けがつかない。
ただひとつ違うのは。
双子の姉、蒼の瞳は、深く暗い海のように青く。
双子の妹、紅の瞳は、鮮やかな血のように赤い。
二人の切れ長の目は細められ、とても生者とは思えないくらい白く美しい顔に笑みを浮かべていた。
幼いのに、妖艶な。
「退屈ね」
「退屈ね」
二人は荒縄に腰掛け、もう一度、退屈ねと言った。
ふと、双子の妹、紅が細く小さな指でなにかを差した。
「蒼。人間よ。お客様よ」
「紅。本当ね。人間だわ」
双子の姉妹は、年相応にきゃっきゃっと楽しそうに笑う。
姉の蒼は、ひらりと荒縄から降りた。妹の紅もそれに倣う。
「蒼。唄いましょう」
「紅。久々のお客様なんだから、いつもより綺麗に唄いましょうね」
そして双子の姉妹は、紫色の唇を開いた。
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