堀田滋の場合

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   二人目も男の子だった。  出産後の妻は、何故かよそよそしかった。  否、今思えば、妊娠を告げた時もどこかよそよそしかった。    二人目が一歳になっても、清美は子供の血液型を教えてくれなかった。  訝しく思った堀田は、産婦人科に行って医者に血液型を訊ねた。  医者は、まず落ち着いて聞いてくださいと言って――二人目の子供の血液型が、堀田と清美ではあり得ないものだと知らされた。  つまり。      あの子は自分の子供ではない――。      信じたくなかった。  堀田は直ぐに、清美に問い詰めた。  否定して欲しくて。  しかし清美は、泣きながら残酷な言葉を吐いた。    元彼と、一度だけ、寝たの。    本当に一度きりよ。だってあなた、仕事で忙しくてあまり構ってくれなかったじゃない。淋しかったの。だから。    だから?    そこから先の言葉は、清美から発せられることはなかった。      気が付いたら、灰皿で清美の頭を殴っていた。  殴って。  殴って。  殴り付けて。  動かなくなったことにも気付かず、堀田はひたすら妻を殴り続けていた。    顔が潰れてしまうまで。    子供の泣き声で我に還った。  一歳になったばかりの男の子。  ――他の男の子供。      堀田は、泣きじゃくる子供の小さな頭を掴み、壁に思いっ切り叩きつけた。  ぐしゃりと、嫌な音がして、泣き声は止んだ。    リビングは、血塗れになっていた。        堀田も、血塗れだった。
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