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死にたい。
死にたい。
死にたい。
それだけを、死だけを思って走っていた。
周りの景色なんて、何処を走っているのかなんて、興味なかった。
走って、走って。
いずれ力尽き、倒れてしまうだろう。
警察に捕まるかもしれない。
別に、それでもいいと思う。
ただ。
長男に合わせる顔がない。
今は解らないだろう。けれど、成長した時のことを思うと。
人殺しの息子。
父親に家族を奪われた子供。
自分はいい。
けれど、可愛い息子がそんなふうに傷付けられるのだけは。
――ほう ほう……。
唄が、聞こえた。
堀田はふと足を止め、自分が神社の近くに居ることに気付いた。
耳を澄ます。
――ほう ほう
ほうたる こい
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