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……いつからだろう、こんな世界になったのは。
一昨年の終わり頃、日本の北方に住む僕たちの元に雪という冬を知らせる便りは舞い降りて来なかった。
「暖冬」
そんな話もあったが、平均気温は6月となんら変わりなく、枯れ木が所々芽吹いていた11月末。
そして去年の今頃、僕たちの前には深緑の季節が待っていた。
初めてコタツ要らずの正月を過ごした僕たちは、いよいよ事の異質さに気付き始めた。
だが、既に遅かった。
桜咲く3月、既に陽気は8月並。
人々の身体はすぐに異常な環境に適応出来るはずもなく、幼年、高齢者や病人は次々と死んだ。
政府の対策なんてたかが知れてるし、人々は頼る気も無かった。
日本の人口の減少に拍車がかかったのも、きっとそのせいだろう。
その間、人々は基本的に影響の少ない北――北と言っても地球の北側だが――に移住を始めた。
無論、人が居なくなったので日本は衰退していく。
現在では、田舎はおろか東京でさえも閑静な世間になってしまった。
他のアジアの国々も、詳細は知らないけど多分同じだと思う。
南半球の事は僕はわからない。
今じゃ、ニュースすらまともにやっていないし。
やっているのはローカルテレビぐらいだと思う。
そんな日本に残っている人は、僕も含めて多分物好きなんだろうと思う。
もしくはお金が無い、面倒、病人、高齢、の内のどれかだ。
まぁ、そんな日本じゃ学校も機能する訳もなく。
結局、異常気象が回復するまで無期限の夏休みとなった。
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