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鼓膜が破れそうな程の銃声、弾丸の嵐。カウンターの後ろにあるボトルや食器を粉々にする。伏せながらウィルは舌打ちをした。撃たれたボトルと食器は、中々に上等な物であったらしい。
カウンターの裏にしゃがみ込んだブレット。その上を無数の銃弾が通過し、割れたグラスやボトルの破片が頭上に降り注ぐ。
「で、相手はどこのどいつなんだよオッサン」
隣で同じ様にしゃがむウィルへ、懐から取り出したタバコを口にくわえながらブレットが尋ねた。
「まあ待て」
短くそう言い放つウィル。ブレットは呆れた様子でウィルへと詰め寄る。
「待てじゃねえよ、今俺が解ってんのは、頭が悪そうでボルシチ臭ぇロシア野郎が、イスラエルが産んだ素晴らしき発明、Uziで9ミリをばらまいてるって事だけなんだよ」
「ブレット、良く見て無かったのか? 一人はオーウェンを使ってるぞ」
「そういう問題じゃねえ」
「まあ待て」
そう言ってウィルはカウンターの端に行き、店内を覗き込む。既に何人かの客がひっくり返した丸テーブルを盾に反撃していた。こんな出来事に慣れている常連は倒した丸テーブルの後ろでのんびり酒を飲んでいる。
「こりゃ偶然だな」
「何がだよ?」
「あのロシア野郎共はお前に紹介しようと思ってた仕事の依頼主側の奴らだ」
「奴らの目的は?」
「大方敵対する勢力の幹部でも居たんだろ」
「どうすんだよ?」
「連絡が無かったからな【協定上】反撃しても問題無え。それに」
ウィルは一度言葉を切ると、床下から大きな機関銃を取り出した。
「金が入るとは言え、店を壊されるのは腹が立つからなぁ」
ウィルが不敵な笑いを浮かべながら銃に弾を込める。
「おいおい、【PKS】だあ? 戦争でも始めるつもりかよ」
「お前も手伝え」
「断る」
ウィルの要請をブレットは即座に拒絶した。
「おい、その腰に付けてるコルトとベレッタは飾りもんか?」
「弾代が勿体ねえ」
「そんくらい出してやる」
「本当か?」
ウィルの言葉にブレットが飛び付く。元々この男も撃ち合いが大好きなのだ。
「ああ、出してや……」
「よし!! 久々に暴れるぜ」
ウィルの言葉は最後まで紡がれる事無く、ブレットに掻き消された。先程までの気怠い感じは消え、ブレットは嬉々とした表情を浮かべる。
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