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「えぇ。残念ですが、私も逆らえないのです。」
爪を構えながら、張コウと呼ばれた男は目を伏せた。趙子龍さんも、そうかと言って槍を構える。
その瞬間、もの凄い殺気が渦巻いた。
「…こっちに。大丈夫、下がっていて。」
渦巻く殺気に、アタシは趙子龍さんの背中で息の仕方を忘れてた。それを救ってくれたのは、槍と楯を構えた星彩さんだった。
星彩さんは、アタシに励ますような視線を送ってくれる。また、島津義弘も大丈夫だと言うように背中を軽く叩いた。
「お互い、退けぬと言う訳か…。良いだろう!この趙子龍、お相手つかまつる!!」
「張儁乂、参りますよ!」
張コウが地面を蹴って、趙子龍の懐に一瞬で潜り込むと、腕を交差させて一気に左右に薙ぎ払う。
趙子龍はそれを後ろに飛びのいて避けると、踏み込んで鋭い突きを放つ。
まさに、一瞬一瞬の戦いにアタシは目が離せなかった。それは、趙子龍さんが心配だと言う事もあるけど、それ以上に二人が戦う姿は美しかった。
洗練された、無駄のない動きに刃が閃く。
二人から発せられる闘気に、兵は近づく事が出来ない。
そして………
「………っく!此処まで…ですか……。」
先に膝を着いたのは張コウだった。腕や肩、腹などから血が流れ、結われていた長い髪は解けて風にさらわれている。
趙子龍さんは、そんな彼を唇を噛み締めて苦しそうに見つめる。
「趙子龍殿、私は負けました。どうぞこの首、お持ちなさい。」
「………っ!」
「……は?」
アタシは張コウの言葉が理解出来なかった。何だって?首?まさか、まさかそれって……。
「………っく!」
張コウが目を閉じて、趙子龍さんが槍を振り上げた瞬間。アタシは張コウの前に飛び出してた。
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