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亜紀は昼ごはんを食べた後、畳の上でゴロンと横になっている。
「お母さん」
はっきりと、発音の良い声で亜紀の母、美津子を呼んだ。
美津子は洗い物をしていて聞こえない様だ。
「お か あ さ ん」
もう一度ゆっくりと呼んだ。
やはり、聞こえない。
諦めて古く何のセンスも無い扇風機の首を、ガタガタと自分の体に向けて折る。
生温い風がゆるゆると亜紀の体にまとわりついた。扇風機の風に当たるとグッタリとするのは何でかなぁ、と考え、
そして考えても無駄だとすぐに思いなおした。
夏の陽射しはいよいよ強さを増し、皮膚を突き抜けるような光が家の中にまで入ってきている。
ぬるま湯みたいな湿気に全てのやる気を奪われて、亜紀はぐったりとするばかりだ。
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