散花 1

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走って、走って、走って… 気がついたら森にいた。 どうやってここに来たなんて覚えていない。 追いかけてくるモノを振り切るように、滅茶苦茶に走ってきた。 それは警察だったかもしれない。 または己が犯した罪か… 追いかけくるものは何だったか… 後ろを振り返り、それを確認する余裕なんて俺には無かった。 走って、走って、走って… そんな時だった。 彼女と出会ったのは…。 ようやく息をつけると思える場所まで逃げてきた。 そこがここだった。 ここはどこだろう…。 そう思ってあたりを見渡したときだった。 「―――――ッ!」 「―――――」 何かを言い争う声が聞こえた。 あまり良さそうな雰囲気ではない。 でも好奇心には勝てずに、その声のする方へと足を運んだ。 そこで見た光景はまさに、小さな女の子を連れ去ろうとしている男のソレ。 しかも明らかに怪しい出で立ちの男が、だ。 黒スーツにスキンヘッドにサングラス。 ……怪しい。 そう思いながら彼女を助けなければ、と二人に近付く。 それ以外、何も考えていなかった。 「い…やだってば!離して…よ…ッ!」 「煩ぇ!大人しくしてろ!」 「…っつ!」 思い切り殴られた少女。 その瞬間、俺の頭の中は真っ白になる。 「…ったく、手こずらせやがっ……ガッ!!」 「……え…?」 気がつけば、男は地面に伏せていた。 彼女はぽかん、としながら俺を見上げていた。 俺の手には… また血のついたレンチが握られていた。 まただ。 またやってしまった。 地面に伏せている男の頭の形は変形している。 おそらく… 人を殺した、ということについて何も感じることはなかった。 だが、何も感じなかった、という事実が恐ろしかった。 やっぱり、俺は… 狂ってるんだ…。 だけど、それもどうでもいいと思った。
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