散花 1

5/11
前へ
/24ページ
次へ
彼女はこの森の先に住んでいるらしい。 連れられて森を抜ければ、今まで見てきた景色とは不釣合いな光景が広がっていた。 むき出しのコンクリート。 鉄鋼。 鉄塔。 それらがごった返していた。 どこか懐かしい匂いを感じる。 工場を後にしてからさほど日時は立っていないはずなのに…。 だけど、今までがあまりにも忙しすぎて、あの日々がとても遠いもののように感じた。 ここは街、だろうか…? だけど暫く中を歩いていると、違和感を覚えた。 殆どが機械に覆われた街。 なのに、エンジンの音や起動音がしない。 煙突もたくさんあるのに、煙が出ているものは一つもなかった。 ここは一体… 機械はたくさんある。 だが、動力が無い。 動かない。 この街は、死んでいる。 そういえば人の気配もない。 なんとも寂しい街だ、と思った。 だけど、俺にはここがお似合いな気がした。 死んだ街。 機械だらけの街。 この少女以外、誰もいない街… 寂しい街… これらが動けば、少しは変わるのだろうか…? 「動かして…みようか…?」 俺にならできるかもしれない。 世界に機械はほとんどない。 工場とかそういう場所にしかない。 大量の物を作るための機械はある。 だけど、機械そのものはあまり無い。 庶民が見ることは滅多にない。 だから、見てきてその知識がある俺ならばこれを動かせるんじゃないか… そう思った。 もし動かなくても、使えそうな部品を集めれば、何か作れるような気がした。 何かを…
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加