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彼女はこの森の先に住んでいるらしい。
連れられて森を抜ければ、今まで見てきた景色とは不釣合いな光景が広がっていた。
むき出しのコンクリート。
鉄鋼。
鉄塔。
それらがごった返していた。
どこか懐かしい匂いを感じる。
工場を後にしてからさほど日時は立っていないはずなのに…。
だけど、今までがあまりにも忙しすぎて、あの日々がとても遠いもののように感じた。
ここは街、だろうか…?
だけど暫く中を歩いていると、違和感を覚えた。
殆どが機械に覆われた街。
なのに、エンジンの音や起動音がしない。
煙突もたくさんあるのに、煙が出ているものは一つもなかった。
ここは一体…
機械はたくさんある。
だが、動力が無い。
動かない。
この街は、死んでいる。
そういえば人の気配もない。
なんとも寂しい街だ、と思った。
だけど、俺にはここがお似合いな気がした。
死んだ街。
機械だらけの街。
この少女以外、誰もいない街…
寂しい街…
これらが動けば、少しは変わるのだろうか…?
「動かして…みようか…?」
俺にならできるかもしれない。
世界に機械はほとんどない。
工場とかそういう場所にしかない。
大量の物を作るための機械はある。
だけど、機械そのものはあまり無い。
庶民が見ることは滅多にない。
だから、見てきてその知識がある俺ならばこれを動かせるんじゃないか…
そう思った。
もし動かなくても、使えそうな部品を集めれば、何か作れるような気がした。
何かを…
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