散花 1

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「動かせるの?」 振り返ると、彼女が俺を見上げていた。 その目には期待という文字が浮かんでいて思わず苦笑い。 「さぁ…やってみないとわからないな」 「じゃぁやってみよう!来て、こっちだよ!」 小さな手が俺の手に触れる。 パシッ… 思わず振り払ってしまった。 「あ…」 「…………」 振り払われた手を見ながら少女は驚いたような顔をする。 それから、ははっと小さく笑う。 「ごめん…気持ち悪い…よね…触られるの…」 そう言いながらシュン、と耳を伏せる。 そう、耳を…。 真っ白な髪。 金色の瞳。 そして明らかに人外の耳。 本来、耳があるべき場所からはふさふさとした毛で覆われた、プードルみたいな形の耳が垂れ下が っていた。 彼女もソレを気にしていたのか、ここまで来る道中俺に自分から触れようとすることは無かった。 「…違う……そうじゃなくて…」 「……?」 「そっちこそ……汚れるから触らないほうがいい…」 血で塗れた手。 別に俺はソレをなんとも思わない。 だけど、この少女にはそれを触らせたくない。 純粋に、まっすぐ綺麗な目を俺に向けてきてくれるこの子には… 手を振り払われる悲しさは俺が一番よく知っていたはずだ。 なのに、振り払ってしまった。 「…ごめん…」 「……え?」 「別に、アンタに触れられるのが嫌なわけじゃない…ただ、俺に触ると汚れる」 だから、触るな。 「あー、そういうこと?大丈夫だよ、水道あるから!」 「………は?」 「それに私も今、汚れてるから気にならないよ」 「いや、そうじゃなくて…」 「石鹸もあるから安心して!」 「だからそうじゃ…」 戸惑う俺の手を、少女はぎゅっと握りながら微笑む。 とっさに俺は手を引こうとしたけど、今度はソレはしなかった。 「大丈夫だよ」 「…………あぁ…」 ぎこちなく笑って見せれば、彼女はそれはもう嬉しそうに微笑み返してくれた。 俺達は手を繋いで、再び歩き出した。
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