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「動かせるの?」
振り返ると、彼女が俺を見上げていた。
その目には期待という文字が浮かんでいて思わず苦笑い。
「さぁ…やってみないとわからないな」
「じゃぁやってみよう!来て、こっちだよ!」
小さな手が俺の手に触れる。
パシッ…
思わず振り払ってしまった。
「あ…」
「…………」
振り払われた手を見ながら少女は驚いたような顔をする。
それから、ははっと小さく笑う。
「ごめん…気持ち悪い…よね…触られるの…」
そう言いながらシュン、と耳を伏せる。
そう、耳を…。
真っ白な髪。
金色の瞳。
そして明らかに人外の耳。
本来、耳があるべき場所からはふさふさとした毛で覆われた、プードルみたいな形の耳が垂れ下が
っていた。
彼女もソレを気にしていたのか、ここまで来る道中俺に自分から触れようとすることは無かった。
「…違う……そうじゃなくて…」
「……?」
「そっちこそ……汚れるから触らないほうがいい…」
血で塗れた手。
別に俺はソレをなんとも思わない。
だけど、この少女にはそれを触らせたくない。
純粋に、まっすぐ綺麗な目を俺に向けてきてくれるこの子には…
手を振り払われる悲しさは俺が一番よく知っていたはずだ。
なのに、振り払ってしまった。
「…ごめん…」
「……え?」
「別に、アンタに触れられるのが嫌なわけじゃない…ただ、俺に触ると汚れる」
だから、触るな。
「あー、そういうこと?大丈夫だよ、水道あるから!」
「………は?」
「それに私も今、汚れてるから気にならないよ」
「いや、そうじゃなくて…」
「石鹸もあるから安心して!」
「だからそうじゃ…」
戸惑う俺の手を、少女はぎゅっと握りながら微笑む。
とっさに俺は手を引こうとしたけど、今度はソレはしなかった。
「大丈夫だよ」
「…………あぁ…」
ぎこちなく笑って見せれば、彼女はそれはもう嬉しそうに微笑み返してくれた。
俺達は手を繋いで、再び歩き出した。
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