【第一幕:開戦】其の壱

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雨露に濡れた草の香りは血の臭いにも似る― ―最初に述べたのは、いったい誰であったか。 濃霧。 あたり一面を、霧が、真っ白に覆っている。 地面に無造作に生えた雑草は、強烈な臭気をその大気に漂わせている。むせかえるような、濃い緑の匂い。 既に九月も半ばである。 既に色褪せ始めてもおかしくない季節だと言うのに、地に生える雑草は、真夏の中にあるかの如く、青々しい。 体感温度そのものは、決して暑い訳ではない。 だがその大気には、緑の臭気とともに、濃い熱気が溶け込んでいるのである。 草木が青々しくなるほどの、強烈な熱気。 ―それは、戦を前にした武士(もののふ)たちの肉体から発せられる、濃厚な熱気であった。
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