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慶長五年、九月十五日。
美濃国は不破郡、関ケ原の地に、十五万人を越える数の漢達が集結していた。
関ケ原は、盆地である。
その盆地に、合戦を前にした日本全国の有力大名達が一同に介しているのである。
尋常ではない、熱気。
それは、上空を翔んでいた鳶ですらも異変を感じるほどのものであった。
鳶の目に浮かぶ地上の様相。
それは、盆地の東方に配置された七万二千の軍勢と、それを取り囲むように配置された西方八万四千の軍勢の姿であった。
西方八万四千の軍勢は山岳地帯の南北に大きく広がり、東の軍勢を挟み込むように配されている。
鶴翼の陣―。
鶴が羽を広げるが如きその陣形、しかも山岳地帯という高所を抑えている。
西軍八万四千の軍勢の勝ちはゆるぎない―
そう思わせる布陣だった。
だが鳶はそんなことは思わない。
思うことは出来ないし思う必要もない。
人間の戦―。
天下統一を果たした豊臣秀吉の死後、その家臣同士の成敗合戦であった。
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