弍話 蒼き鬼

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【1】       ふわり、と岩から地面へ降りると。背を向けたまま、少女は肩越しに輝を見やった。 《道を登った先に、私を奉る社(やしろ)がある。そこに、“蒼鬼(そうき)と名乗る小僧が居るはずだ。そ奴に事情を話し、助力を請え。案ずるな。高淤(たかお)の命令だと言えば良い》  言って、顔を背けると。少女は、伸びるに任せた後ろ髪をなびかせて、蜃気楼が消えるように去っていった。  それが、つい半時前のこと。 「って。歩いても歩いても、景色変わらないんですけど!」  疲れを吹き飛ばすかのように、輝は口を大きく動かして叫んだ。  右は、道に沿って上手から流れる貴船川。  左手は、姿かたちがどれも一緒の高木繁る、奥深い山。 「魔女とか鬼女とか“だいだらぼっち”とか、本気で居るんじゃないの?」  肩をいからせ、腕を振りながら歩いていく。  少女と別れた岩からの四十分間。やたら踏み込む足に力を入れ、不平不満を声を大にして、ぶちぶちと垂れている。
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