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確かに、先ほどから乗客全員がチラチラとこちらを見ている
智明の容姿が派手なせいもあるが、あれだけ派手に転倒して物をぶちまけたんだから注目の的である
彼女は注目の的になっているのが苦痛でたまらないようで、急いで反対側の乗車口の隅へ身を隠した
智明もその場に立ち上がり、窓の外だけをじっと眺める彼女をずっと見つめていた
ガタン…
シュー…
電車が停車し、乗車口が開いた
「あ…」
いつの間にか、智明の降りる駅に到着していた
彼女もスタスタと乗車口が開くや否や、素早く降りて歩き去っていった
「……ん?」
彼女が電車を降りる間際、カバンからハラリと何かが落ちた
…生徒手帳?
智明は彼女の落とした生徒手帳を拾いあげ、パラパラと開いた
三年一組三番
上杉 菜摘
その横には先ほどの彼女のムスッとした写真が貼り付けられていた
ピピー
「ああ!!降りる降りる!!」
発車の合図に慌てて電車を飛び降り、間一髪、乗車口に挟まれずにすんだ
「駆け込み下車にもご注意くださいってか」
変な独り言をもらして、智明は生徒手帳の主を走って追っかけた
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