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「ホントに突然でしたね」
「突然電話してきたお前の父親に文句を言え」
京都行きの新幹線で、アンリは適当に買った弁当をつつきながらツバキに、返事する。
慌ただしく荷造りを済ませ、予約し、最速での移動を敢行していた。
「京都ですか。犬に優しい所だと良いのですが」
フェイが鼻をスンスンさせながら言う。仕草は犬だがさすがに今日は人間の姿をしている。
「東京よりは優しいだろう」
学生時代に修学旅行をガン無視した過去を持つアンリは、京都に行くのはこれが初めてなため、発言は全てイメージだ。
「ところでアンリさん」
「なんだ」
「何故もうお弁当を食べているんでしょうか」
「腹が減ったからだが?」
新幹線の現在地は東京駅。そしてアンリ達が乗り込んだのも東京駅。つまりまだ発車していなかった。
「時間があるのなら、駅の写真を撮りたかったです」
「いつでも撮れるだろう。それにまだ工事中だ」
「それがいいんですよ」
と、ここに来る前に急遽買ってきた使い捨てカメラを手に、ツバキはウキウキとした笑みを浮かべた。
「後日、自分1人で撮りに行け」
山手線なら一周したってそれほど金はかからない。が、わざわざ金を使うほどの事でもなく、ツバキは「もーいいですよ」とそっぽを向いた。
「京都では撮りますから!」
「観光に行くんじゃあ無いんだがな……」
呆れたように言うアンリだったが、ツバキとて千円払ったカメラを無駄にする気は無い。
「フェイさん、一緒に撮りましょうね」
声をかけられたフェイはツバキにチラリと視線を向け、呟く。
「先程から写真写真と……埼羅様とキャラがかぶります。御自分のキャラが薄いからと浅はかな」
「……なぜ写真1つでこうも攻撃されているんでしょうか、私は」
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