31873人が本棚に入れています
本棚に追加
ガタゴトと走る電車の中、奇妙な奇遇により3人の旅は5人の旅へと変化した。
「ホントに凄い偶然ですよね!」
ツバキが満面の笑みで真希に話しかける。その笑顔は賑やかになったことへの喜びもあったが、これで自分がいじられる回数が減る、という腹黒いものでもあった。
「私、神社の人間なのに京都に行ったこと無かったのよ。神社仏閣って言ったら京都じゃない?」
「それを言ったら私だって、クリスチャンですけどローマやバチカンなんて行ったことありませんよ」
ようやく会話できる相手を見つけた2人は非常に賑やかだ。
テレジアに話しかけたところで返事など返ってこないし、アンリやフェイに話しかけるなど自爆行為に等しい。少なくともろくな目にはあわない。
対する無口組はというと、テレジアとツバキが席を交換したことにより車内の一角に奇妙な空間を作り上げていた。
なんら反応を示すわけでもなく、ひたすら無言で目を合わせ続けるアンリとテレジア。
そして車窓からの景色を楽しんでいるのかと思いきや、ついつい高速で流れていく電柱を目で追ってしまうフェイ。
第三者からみれば、関係性も行為も不可解な三人組であった。
まだ見ぬ京都の話に花を咲かせていたツバキと真希も、不変を貫く3人の行動がきにかかり、時折チラチラと様子を伺い始める。
「で、アンリ達はこれからどうするの?」
クイッと水で喉を潤し、真希がたずねる。
真希はテレジアと有名所を観光して回るつもりだったが、アンリ達が似たような観光をするのなら便乗しようと考えたのだ。
「まあ、神社に行くことになるだろうな」
アンリは手元のメモを見ながら、そう告げる。メモには神父から聞かされた聖杯がいるとされる神社の所在が書かれていた。
「じゃあ私達も行っていいかしら?」
最初のコメントを投稿しよう!