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アンリはその顔面から学生時代、よく女子から遊びなどに誘われた。
故に断るのも呼吸するがごとく慣れている。
「悪いが、初対面の人を訪ねるんでな。あまりゾロゾロと大勢で行くのは相手に悪い」
ウソではない。ウソではないのだが、アンリが相手を気遣うというのがウソそのものだ。
だが真希は一般常識に基づいて考えたため、それで納得した。
「それなら仕方ないかぁ。でも時間ができたら電話してよ?」
「ああ」
これにはツバキも異論は挟まなかった。
もちろんどうせなら真希達とのんびり観光コースのが断然いいのだが、今回ばかりはそうも言っていられない。
そして間違いなく、戦いになるだろう。そんな場所に真希達を連れて行くことはできない。
「そろそろ着くぞ。荷物をまとめろ」
「はい」
各々、出したゴミなどをまとめ、いつでも降りられるよう準備を済ます。
そして京都に到着したむねを伝えるアナウンスが流れた。
駅のホームは春休みということもあってか人が多い。
「む……」
未だ人ごみになれないアンリ顰めっ面を浮かべながらも、人の壁を掻き分け進み、その後にツバキ達も続いた。
人ごみは改札を抜けても続き、いい加減アンリが苛立ち始め、フェイが狼型になって蹴散らそうかという時、横合いから彼らを呼ぶ声が届いた。
「ツバキ様。それにアンリ様とフェイ様ですね? お迎えにあがりました」
そこにいたのは1人の巫女だった。
舞妓が町を歩くような場所であっても、巫女が巫女装束で歩きまわるのは異質らしく、微妙に周りを人が避けている。
もっとも、喜んで写真を撮っている外国人の姿もあるが。
「迎え?」
行く、と連絡などしていない。連絡先も知らないし、手紙を送っている暇もなかった。
「神父様から伺いました」
「なるほど」
神父の手回しに感謝しつつ、アンリは巫女に案内を任せる。
「お連れの方々も、どうぞこちらへ」
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