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「なに? いや、こいつらは気にしなくて――」
「あら、いいんですか?」
アンリを遮り、真希が確認する。
そこにあるのは人数が減る淋しさと、単純な興味。
アンリがわざわざ京都まで訪ねる人物。しかも初対面だというのが、気になっただけ。
だから、相手に迷惑をかけてまでと一度は諦めたが、その相手が良しというなら、是非とも着いていきたい。
「構いませぬ。もちろん込み入った話をされる際は席を外していただきまするが、元より神の社は来る者を拒んではおりませぬゆえ」
相手に迷惑だからと彼女達の同行を拒んだ以上、こうなってはアンリに反論する余地は無い。
もちろん、それでも頑なに、頭ごなしに拒否すれば真希は引き下がるだろう。
だが人間関係に不慣れはアンリは、そうすることで険悪な雰囲気になることを恐れてしまった。
初めから知人を作らない孤独なら平気だが、知人との関係が壊れることは、アンリにとって未知の恐怖を感じさせたのだ。
「車を用意しておりまする。どうぞ、こちらへ」
そう言って真希達を誘導する巫女を、アンリが睨む。
(どういうつもりだ、この女……)
神父が連絡を取り、アンリ達を迎えたのなら、神の救世、そのルールをしらない筈が無い。
聖杯同士が顔を合わせるということは、それすなわち殺し合いを意味している。
だというのに、何故そんな場に民間人を招くのか。
するとアンリの視線に気づいた巫女が、ニコリと微笑み、お辞儀する。
「失礼、名乗りを忘れておりました。ワタクシ、禊 儚(ミソギ ハカナ)と申しまする。以後、お見知りおきを」
儚はヒラリと袴を翻し、純白のワゴン車へとアンリ達を導く。
どうやら運転手も彼女が勤めるらしく、巫女装束を着ているとは思えない軽やかな動きで運転席に乗り込んだ。
「では参りまする。ご安心を、ワタクシ黄金免許証の持ち主でございますゆえ」
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