前編『幻装』

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「貴女にチカラを授けましょう。」 声は確かにそう言った。 「チカラ?」 チカラと言っても一体この声は、どうやって授けてくれるつもりだろう?と、勇気は首を傾げる。 「既にチカラは貴女の傍に… 後は貴女の決意と共に叫びなさい『幻装』…と。」 勇気は、声に導かれる様に自分の想いを叫んだ。 「ボクは…今までセリスちゃんに助けられて来た、でもボク自身は何も出来なかった…だから、今までの弱いボクとは決別したい…ううん、違う……卒業するんだ!」 強い決意表明をする勇気。 「今は修練の暇は無い、だから…チカラを貸して。」 借りる相手はその声か、それとも別の何かか? 現実の勇気を朱い光が囲む。 勇気は高らかに叫んでいた。 「幻装!」 朱い光は鳥の姿になり、勇気を包み込んで燃え盛る。 盛る炎に包まれて、今まで着ていてボロボロになった鳳桜学園高等部第14学区暁舎の制服から、アンダースーツに換わる。 次に炎は勇気の両脚を、両腕を、腰を、胴体を、両肩を…そして頭を覆う。 それは意味なき炎の塊から、意味成す装甲へと変換される。 今こそ勇気は、朱を基調とした美しい炎の装甲をその身に鎧うのだった。
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