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古風というか何と言うか。
花札なんて今の時代の少年少女が知ってる遊びじゃないだろう。
てかギャンブル性が強すぎたりもするからそれも含めてマイナーになった原因じゃないのだろうか。
「あー……後数ヶ月もすれば卒業か」
「いきなりどうしたんだい?感慨に耽ったりして」
葵は手札を見て悩むように眉間にシワを寄せている。
「そりゃあ思い出なんてないけど三年間通った学校だからな」
「まだ卒業まで時間はあるんだろ?その間に思い出が出来たりする可能性も無くは無いんじゃないのかい?」
そりゃそうだ。
でも可能性はほぼゼロだろうな。覚えている出来事なんて先輩達から因縁つけられて殴り掛かられた、とかしかないもん。
「時にフウタ。この勝負待ってくれないか?」
「待ったは無しな」
「ケチ」
「可愛く言っても無駄だ。てかお前は男だ」
「その通りだよ」
そういってケタケタ笑う。
だって俺が葵に勝てるゲームなんてカード系しかないもん。
カードなら頭の良さじゃなくて純粋に運が試されるから勝負は平等だ。
勝てる勝負は勝つ、それが俺のジャスティス。
……なんか違うか。
ただ、この時俺は気を抜いてたんだと思う。いや、完全に油断していた。
卒業までの短い間に何かが起こるわけないと思い込んでいた。
愚かにも思っていた。
短い期間だからこそ、大きな事が起こると言うのに。
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