第1章

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       1    赤井英明は欠伸を噛み殺した。  電車は満員なので座れない。赤井はドアの付近に寄りかかりながら、バッグからゲーム機を取り出した。  赤井はゲームが特別好きな訳ではない。しかし、通学中はどうしても時間を持て余してしまう。  勉強でもやれば優秀な学生ということになるのだろうが、赤井はそこまで勉強熱心ではなかった。  ゲームをしながら今日の大学でのゼミを思い出す。  就職。  教授がふいに言った言葉が頭の中で繰り返し再生される。  大学生活も残すは1年と数ヶ月。3年である赤井には到底無視できる言葉ではなかった。  自分には何が向いているのか。様々なセミナーに参加してはいるが、目指すべき道は見えてこない。  このままニートにでもなるか。  そんな考えが頭をよぎる。
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